大気圧低温プラズマを用いて液体の中でプラズマプロセスを行う事を目的として応用研究を進めているが、その反応素過程を理解するために、本研究では液中に生成されたラジカルの生成メカニズムを電子スピン共鳴(ESR : Electron Spin Resonance)法を用いて研究を行った。プラズマ医療を目的とした液体を高効率で殺菌する技術を開発済みであるが、反応活性種としてスーパーオキシドアニオンラジカル(O_2^-・)が重要であることが分かっているために、特に注目して測定を進めた。水溶液中でO_2^-・は不均化反応により消滅していくことが知られているが、pHをアルカリ条件にすることで長寿命化すると考え、アルカリ溶液でトラップするアルカリトラップ法を開発した。従来の試薬を用いるスピントラップ法と異なり、O_2^-・のトラップ効率は本質的に100%であることから、非常に感度良く測定を行う事に成功した。その結果、プラズマと液体が必ずしも接触していなくても、液中にO_2^-・が生成される明瞭な信号が得られ、距離と反比例してスピン数が減少することが分かった。 また、このような非接触でも液中にラジカルが生成される機構として、空気中で安定して存在するイオン種である"大気イオン"が関与すると考えた。質量分析装置を用いてプラズマジェットの先端から10cm程度離れたところの空気をサンプリングしたところ、O_2^-・に水分子が水和したクラスターイオンが存在することが確認された。このことから、大気イオンが関与するプラズマ誘起液中化学反応が起こしうることが分かった。また、同様にNO_x^-も空気中、液中に存在していることがわかった。 上記したように、世界に先駆けて新しい側面からプラズマが関与する液中プロセスに関する研究が行えたことは高い価値があると言える。
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