本年度は単一分子ナノ集合体の光物性ならびに光物理化学挙動の計測のためのレーザー走査顕微蛍光分光装置の改良を進め、以下のような性能の向上を実現させた。 アクチュエータ動作方式の改変によるレーザー走査の高速化を図り、基板上の数10μm四方領域の高解像度蛍光イメージを数分で取得できるよう改良した。また、高開口数ドライ対物レンズ(NA=0.95)の導入により空間分解能および光子検出感度を向上させ、検出光学系に穴径75μmピンホールを導入することで、散乱による背景光を著しく低減させた。このような改良を施すことにより、高分子薄膜マトリクス中に分散された単一色素分子の蛍光スペクトルや蛍光強度の時間変化を高い信号/背景光(S/B)比で測定を行うことが可能となった。本年度中に低温・真空条件下で単一分子測定を行うまでには至らなかったが、本研究計画の主要な目的であるマトリクス単離された単一分子ナノ集合体の光物性計測のための装置主要部分を完成させ、その良好な性能と動作を確認した。さらに本年度の終盤には、γ-シクロデキストリン(γ-CD)ナノマトリクス中におけるペリレン誘導体の単一分子蛍光分光を行い、1分子レベルでのγ-CD包接色素分子の光物理化学的挙動と高い光安定性を明らかにした。
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