研究概要 |
これまでの研究で,新たに開発した3,7-位にカルバゾール置換基を有するベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジフラン(ρ-CZBDF)が示す高移動度両極性を利用することで有機ELの構造革新に成功している.すなわち,現在主流の多物質多層構造であるヘテロ接合型から,p-CZBDFを単一マトリックスとするホモ接合型で青・緑色蛍光および赤色リン光を用いたフルカラー磯ELを実現した.しかしながら,有機ELの効率化のためには,青・緑色についてもリン光を用いることが重要である.そのためには,高い三重項励起状態エネルギーと高いキャリア移動度という,分子設計上相反する2つの要請を同時に満たす化合物が必要となってくる.そこで今年度はこのようなチャレンジングな課題を克服すべく,新たな分子開発を行った.種々検討の結果,ベンゾ[1,2-b:6,5-b']ジフラン(o-CZBDF)骨格を有する化合物がこれらの物性を同時に発現することがわかった.実際,この誘導体を用いることで青色リン光ELを実現した.今後,ホモ接合型フルカラーリン光有機EL素子への展開が期待され,製造コスト削減などにより有機ELの実用化が一気に加速することも期待され,省エネルギー化によるエネルギー問題,特に電力不足の解決に貢献する可能性を有する. また,含窒素化合物のバッファ材料としての研究も進んでおり,現在特許申請準備中である. このほか,炭素のみからなるインダセンを基本骨格とする化合物の合成法を新たに開発し,正孔・電子とも移動度が10^<-3>cm^2/Vs(非晶質・TOF法)というバランスのとれた高キャリア移動度を示すほか,蛍光量子収率がほぼ1という値を示すなど,本研究課題の多機能性材料の探索をいう意味で新たな可能性を示す物質を見出した.これら一連の化合物は有機素子に革新をもたらすものとして期待される.
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