研究概要 |
本年度は、昨年度に開発した蛍光性温度センサーによる生細胞の温度測定を進めるとともに、より正確な計測手法である蛍光寿命イメージング法の導入を試みた。初期検討としてマイクロ流路を測定対象としたところ、以前に我々が開発した蛍光性温度センサーpoly(DBD-AE-co-NIPAM)と蛍光寿命イメージング法を組み合わせることで、0.1℃程度の温度分解能を達成することができた。これは既存の方法と比較すると10倍程度の分解能の向上に相当する。一方、昨年度に開発した蛍光性温度センサーと蛍光寿命イメージング法を組み合わせて生細胞の温度計測を試みたところ、30℃付近で観察される蛍光性温度センサーの凝集がパイルアップ効果の原因となり、正確な温度測定の障害となることが判明した。そこで、より親水性が高く細胞内において凝集を起こさない蛍光性温度センサーとして、イオン性ユニットを導入したpoly(NNPAM-co-SPA-co-DBD-AA)を新規に開発した。今後はこのセンサーを利用して生細胞の温度分布イメージングを進める予定である。 以上の結果の中から、蛍光寿命イメージング法によるマイクロ流路の温度測定に関する成果をLab on a Chip誌上(Graham E. M. et al.,Lab Chip,2010,10,1267)で論文公表した。またアクリルアミドを利用した蛍光センサーの研究開発分野の代表として、解説記事を有機合成化学協会誌(2010年2月号p.153「ポリアクリルアミド系蛍光センサー」)に寄稿した。
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