本研究では、多光子イオン化/飛行時間型質量分析法の試料導入法として従来用いられている連続試料導入法とパルス試料導入法の利点を融合させた、オンライン濃縮レーザー脱離試料導入法を開発し、本試料導入法をガスクロマトグラフィーおよび超音速分子ジェット法と組み合わせて利用することを目的としている。本年度は、本ノズルの繰返し周波数依存性について検討した。イオシ化用レーザーとして1kHzのフェムト秒レーザーを、また脱離用レーザーとして繰返し周波数可変のナノ秒レーザーを用いた。結果として、脱離用レーザーの繰返し周波数を変化させた際の信号増倍率の依存性を測定し、本手法が低繰返しから高繰返しまで変化させることができるパルスノズルとして動作可能であることを確認した。 また、ガスクロマトグラフと飛行時間型質量分析計のインターフェイスとして用いた場合の、超音速分子ジェットによる波長選択性について検討した。その結果、イオン化光源のレーザー波長を芳香族炭化水素の共鳴波長に合わせた場合、選択的にイオン信号を検出することに成功した。これにより本試料導入法が、試料の利用効率を高める手法であるだけでなく、超音速分子ジェットを発生させることも可能であることを確認した。以上の結果を踏まえ、本年度出版されたAnal.Chem.誌において、本法をOnline COLD法(Online Concentration by Analyte Adsorption/Laser Desorption)法と命名した。
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