平成20年度の検討において得た知見をもとに、平成21年度には光学活性合成素子として医薬品において高いニーズがあるにもかかわらず十分に有用な合成法の少ない光学活性含窒素-リン酸化合物の合成手法の確立と非天然型アミノ酸の合成手法の探索を中心に検討を行った。具体的にはβ-ケトリン酸エステルを求核剤とするイミンへの付加反応およびニトロエステルのビニルビスボスホネートへの共役付加反応、α-ケトアニリドを求核剤とするイミンおよびニトロオレフィンへの付加反応、α-イソチオシアネートエステルのケトンへの付加反応、マロン酸ハーフチオエステルの脱炭酸的付加反応、イソシアネートのα-付加反応、オキシインドールを求核剤とするニトロオレフィンへの共役付加反応などにおいて複核シッフ塩基触媒が非常に有効であることを見いだした。特に20年度に得た知見を活かしつつ研究を柔軟にすすめた結果、内部配位場に配置する金属種として遷移金属以外にも13族金属も適用可能であることを見いだした。また、アミン母核の選択における知見と、遷移金属フェノキシドの特徴を活かすことでエノラート種の求核力の向上を指向した新規配位子の開発にも成功した。また、外部配位場をメトキシ基でキャップした新規配位子を用いることで、外部配位場にルイス酸性の強いカチオン性の希土類金属源を取り込んだ触媒系の開発にも成功した。平成22年度は平成21年度までに得た知見をもとに、さらなる触媒の機能探索を進める。
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