平成21年度までに得た研究成果を基盤に、複核触媒の機能探索のさらなる深化と医薬合成への応用、さらには錯体の集積化による触媒機能の増強について取り組んだ。特に、21年度までの研究において新たにわかった知見として、触媒の柔軟性が触媒活性に大きく影響を与えるということがあり、22年度には、これらを背景に、シッフ塩基部を還元したアミン型の配位子を検討要素として新たに追加し、検討を行った。特に複核シッフ塩基触媒の強い配位性をうまく活用することで、カルボン酸の存在下でもうまく機能する触媒が生み出せる可能性が高く、この点について積極的に検討をすすめた結果、還元型の配位子に対して内側の配位場にニッケル、外側にランタンを配置した触媒系が優れた不斉誘起能を有することを見いだした。特にマロン酸ハーフチオエステルをドナーとする脱炭酸的なニトロオレフィンへのマイケル付加反応が高い効率、選択性にて進行することを見いだした。本反応はγ-アミノ酸の効率的な合成法として極めて価値の高いものである。また、複核シッフ塩基触媒系のさらなる発展をめざし、広範な金属種への展開を行うことで遷移金属にとどまらず、幅広い金属種との組み合わせにより新たな機能の探索にも取り組んだ。希土類金属に関してもアルカリ土類金属より調製した触媒との活性の比較、機能評価をケトイミンへのエノラート種の付加反応を通じて検討した結果、特にストロンチウム触媒系が有効であることを新たに見いだした。3ヶ年の研究の総仕上げとして、徹底的な反応機構解明を進め、同時に次の発展的なプロジェクト展開へとつなげるための新たな萌芽的な芽としてアルカリ土類金属の有効性についても詳細な検証を行った。
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