研究概要 |
透明酸化物半導体は,強結合性に由来する多様な物性を有し次世代エレクトロニクスを支える新材料として期待されている.近年,自然成長した透明酸化物半導体のナノロッドやナノ細線に関する研究が進められているが,構造制御と量子機能を密接に結びつけた研究例は極めて少ない.本研究では,透明酸化物半導体薄膜のクリーンな界面に閉じ込めた2次元電子面に対して,微細なゲート電極構造(ショットキー接合)を用いて1次元に閉じ込めた電子状態を形成し,量子物性の計測と制御要因の確立およびデバイス機能の開拓を行う.具体的には,量子ホール効果や超伝導を示す酸化物の2次元電子面に,微細加工したショットキー電極で空乏領域を制御する手法を確立することで低次元電子系の電気伝導特性を調べ,既存の半導体や金属に対する共通点や新機軸を明確にする. 今年度は,分子線エピタキシーを用いた結晶成長技術を改良した結果,ZnO/MgZnO界面において,酸化物としては世界最高の移動度(100,000cm^2/Vs以上)を達成することに成功した(投稿準備中).このことは,2次元電子の平均自由工程が1μm以上であることに相当する.したがって,1次元細線構造を実現するための素子サイズをスケールアップすることができるため,微細加工の簡便性につながる.その利点を活かすため,金属(導電性高分子)-半導体(ZnO/MgZnO)接合による2次元電子ガスの電界効果制御性を高めることにも注力した.極低温で量子ホール効果の明瞭な変調を確認した(Advanced Materials誌掲載).このことは,本研究で得られた金属-半導体接合が微細加工による素子形成技術を確立する上で極めて有望であることが示している.次年度(最終年度)に研究目標の達成が望まれる.
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