研究概要 |
本研究課題の初年度の最大の研究成果は, 申請者らが開発しているNaを利用した金属シリサイドの合成法を用いて, 環境型熱電材料として注目されているβ-FeSi_2のバルク体の合成に成功したことである. Feの圧粉成型体をNaとSi粉末とともに900℃, 24h加熱することで, 密度がβ-FeSi_2の理論密度の約75%のバルク体を得ることができた. この合成条件は, FeとSiの溶融プロセスを含む従来の粉末冶金法と比べて, 加熱温度は500℃以上も低温で, 加熱時間も1/4以下である. バルク体を合成できたことにより, 試料の熱電特性を評価することが可能となった. Fe粉にMnやCoの粉末を5at%加えた圧粉成型体から作製されたβ-FeSi_2バルク体は, それぞれp, n型の熱電特性を示した. 本合成手法でも熱電材料として使用するために必要なMnやCoをドープしたβ-FeSi_2バルク体が作製可能であることが明らかになった. さらに, 自作の装置による熱分析測定より, これまで報告のなかったNa-Si 2成分系の状態図を明らかにした. 2元系化合物のNaSiの融点は798℃であり, Si量が50%のNa-Si融液が800℃で存在することがわかった. このNa-Si融液中のSiがFeと高い反応性を示すこと, また液相-固相反応であることが, 低温・短時間でβ-FeSi_2バルク体が合成される原因であると考えられる. また, 研究計画を前倒し, β-FeSi_2以外の熱電変換シリサイドであるMg_2 Siバルク体の合成も試みた. Mg粉末中でNaSiをその融点以下の700℃で加熱することで, 厚みが約300μm脚の中空円筒状のMg_2 Siの厚膜試料を作成することに成功した. NaSiが金属シリサイド合成の前駆体として使用できることが明らかになり, 金属シリサイドの合成手法の幅を広げることができた
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