研究概要 |
本年度は,MnやCo等をドープしたβ-FeSi_2バルク体の合成を行い,p,n型の熱電特性を有する試料の作製と,その熱電特性の最適化を試みた.また,合成試料のスケールアップを行なうことで,詳細な熱電特性の測定および評価を可能にした.具体的にはMnやCo等の添加元素の金属粉末を混合したFeの圧粉成型体を原料に用い,サイズを拡張した反応容器やルツボを用いることで,直径10mm以上のpまたはn型の熱電特性を有する試料の作製が可能になった.このことで,初年度に設置した熱伝導率測定装置を用いた熱伝導率の測定が可能になり,試料の熱電特性を無次元性能指数(ZT)を用いて評価できるようになった.本合成手法を用いた無加圧,低温(1073-1173K)条件において作製されたMnまたはCoを添加したβ-FeSi_2バルク体のZTは約850Kにおいて最大値を示し,その値は約0.1であった. 短時間加熱した試料の元素分布マッピング測定の結果より,β-FeSi_2バルク体の生成機構として,Na-Si融液が焼結したFe成型体の空隙に含浸し,融液中のSiがFeと反応し,ε-FeSiを経てβ-FeSi_2が生成するモデルが考えらた.ドーパントの金属元素はNa-Si融液によりケイ化された後,母相のβ-FeSi_2との相互拡散により固溶することが明らかになった. Naを用いた本合成手法をFe以外の金属シリサイドの合成に応用し,MnSi_<1.7+δ>のバルク体試料を合成することに成功し,その試料が高い熱電特性(ZT=0.3 at 800K)を有することを明らかにした.また,発熱体や高温構造材料として期待されるMoSi_2の粉体試料を従来よりも500K以上低温で合成することにも成功し,活性金属を利用した本合成手法が金属、シリサイドの低温合成法として高い汎用性を有する可能性が示された.
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