研究概要 |
分子の高速な構造変化を時間分解観察し,また,それを制御する上で,中赤外波長域での波形整形技術は強力なツールとなる.本研究では,赤外域での新規な非線形分光およびコヒーレント制御へ向けて,(1)中赤外波長域においてパルス中の光電場が数周期しか存在しないような超短パルスの波形整形技術の確立と(2)精密な波形評価システムの構築を行った.その具体的な内容は次の通りである. (1)半導体音響光学素子を振幅・位相変調器として利用した波形整形器を構築した.中赤外パルスの高次分散を補償し,波数240cm-1以上の範囲にわたって誤差が0.2 rad.以下となるまでスペクトル位相を平坦化することに成功した.さらには,ステップ状の位相変調をほぼ設計通りの形状および振幅で付加することができた.構築した波形整形器の振幅変調および位相変調の周波数分解能は約6cm-1であった. (2)中赤外パルス波形の評価法として,周波数領域のシアリング干渉を利用したTEA-SPIDER法と電場相互相関スペクトル干渉法を採用し,それぞれのシステムを構築した.測定・解析ソフトウェアも開発し,再現性が高く,かつ繰り返し計算を必要としない波形評価を実現した. 以上の通り,中赤外数サイクルパルスの振幅・位相制御とその評価システムを確立することができた.今後は,この波形整形技術を積極的に活かした赤外非線形分光およびコヒーレント制御の研究を推し進める.
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