研究概要 |
本研究では, 人の感性に依存する評価および問題発見のための観察において, 評価者(観察者)が想定外の視点を提示することにより, 評価者に内在する潜在的な評価基準や問題を抽出する支援システムの構築を目的としている. 本目的のための方法として, 複数人の評価者間(観察者間)で相補的な視点を共有する仕組みを支援システムとして実現することを技術課題とする. 今年度では, まず, 製品意匠形状に対する感性を対象として, どの様な他者の評価視点が潜在感性の喚起を促すかについて被検者実験に基づき検証した. 感性イメージを形状として外在化し, その視点を言語により取得し被験者間で相互に提示し評価させた. その結果, 感性の適合性と他者の視点変化への影響について, 優れた形状と視点を生成する被験者に分かれることがわかった. また, 形状のみより評価の視点の提示が有効であることがわかった. 次に, 導入したアイトラッキングシステムを用いて, 言語報告に依存しない感性評価の視点抽出が可能かを検討した. ところが, 意匠形状の評価では, 大域的な形状特徴の寄与が大きく, 注視点による想定外の視点の共有のみでは効果が限定的である事が示唆された. そこで, 部分に対する気づきが大きく影響する適用事例として, ユーザビデオの観察時における観察者の感性に関して検討を行った. ユーザビデオとは, 製品をユーザが使用している状況を録画したビデオであり, 潜在的な設計上の問題やニーズを抽出するための観察に用いられる. 観察時の観察者の視線を計測し, 問題に気づいたシーンにおける観察ビデオと観察者の視線を同時に提示するシステムを開発した. そして, 観察者が, 気づいた問題事象を再生し洞察するために, 視線の提示が有効であることを実験により確認した. また, 複数の観察者間で相互に気づいていない問題事象を共有する際に, 視線の提示による共有が有効であることを確認した.
|