研究概要 |
本研究は,製品の感性品質に対する評価において,顧客が気づいていない想定外の視点を提示することにより顧客に内在する潜在的な感性を喚起させ,潜在的な要求を抽出するための支援システムの構築を目指している.そのアプローチとして,複数の顧客から感性評価の視点を獲得し,相互に想定外となる視点(注目点と観点)を提示する方法を検討している. 本システムを実現する為の技術課題は,(1)感性評価時における顧客の視点を抽出する方法,および(2)抽出した視点から想定外かつ潜在感性を喚起させる可能性の高い視点を抽出する方法の確立である.(1)については,昨年度までに,評価者(顧客)の視線行動から注目点を推定する視線特徴量を開発している.今年度は,主に(2)についての検討を行った.これまでの筆者らの研究から,想定外かつ同意できる潜在的な顧客視点は,少数の顧客(評価者)から抽出されることが分かっている.そこで,本研究では,マジョリティの顧客にとって意外かつ同意できる視点を有する少数の顧客(以下,リードユーザと呼ぶ)を特定することで,潜在感性を喚起させる視点を抽出することとした.リードユーザは他の多くの評価者が気づいていない注目点を有するとの仮説を立て,評価者間の注目点の内包関係を用いたリードユーザの度合いを定量化する指標を構築した. 乗用車の内装デザインをケーススタディとして,視線特徴量とプロトコルによる視点の抽出,および評価者間による視点の相互評価実験を行った.その結果,提案した指標と視点の相互評価との相関を確認した.これにより,視線特徴量によって推定された注目点を用いてリードユーザを特定できる可能性を示した.また,相互評価が高い視点は,頻度が低く想定外の注目点に関する視点であることが分かった.以上の知見を用いて想定外視点を抽出・提示することで,顧客の潜在的な感性を喚起し,潜在的な感性要求を抽出する支援実現できることを示した.
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