研究概要 |
近年, 大気海洋大循環モデル(GCM)を用いて地球の温暖化を予測するための研究が国内外で活発に進められているが, その信頼性は必ずしも高くはない. その原因として指摘されている項目の中で最も重要なものは, 地球全体の熱収支に及ぼす雲の影響が正確に評価できていないことである. そこで, 本研究では, 太陽光による熱エネルギーの大気乱流中における反射・吸収・透過プロセスに及ぼす雲の影響を, 精巧な室内実験および高精度の数値シミュレーションを行うことにより解明することを目的としている. 平成20年度の実施概要を以下に示す. (1) 単一液滴の内外部流と熱輸送に関する研究 単一液滴の内外部流流れに三次元直接数値シミュレーション(DNS)を適用することにより, 空気の相対湿度が水液滴の蒸発速度や熱移動特性に及ぼす影響を明らかにした. また, 単一液滴の蒸発速度に及ぼすレイノルズ数空気温度および相対湿度の影響を実験的にも検討するための実験装置を設計, 製作した. 具体的には, 単一液滴を毛細管を用いて固定し, 流量, 温度および湿度を調整した空気を下方から流した. 流れ場をLDVにより, また, 蒸発による液滴の粒径および液滴温度の変化を高速度ビデオカメラと流体温度計測システムを用いて計測可能とした. 現在は, 本装置を用いて詳細な計測を進めている. (2) 分散二相乱流の熱輸送に関する研究 太陽光による熱エネルギーの反射・吸収・透過プロセスを模擬可能な, 実験室規模のシミュレーション装置の設計, 製作を試みた. 具体的には, 現有の風洞装置を改良し, 雲を噴霧装置により, また, 太陽光の熱エネルギーをレーザ光や波長域の異なるハロゲンランプ, キセノンランプにより再現することを試みた. しかし, 実際の雲に比べて, これまでに得られている風洞内の乱流は弱く, 噴霧の濃度が薄いことがわかった. そこで, 現在はより実際の雲に近い状況を作るための対策を検討中である.
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