研究概要 |
近年,大気海洋大循環モデル(GCM)を用いて地球の温暖化を予測するための研究が活発に進められているが,その長期予測の信頼性は必ずしも高くはない.その原因の1つとして,温暖化の進行過程において特に重要となる地球全体の熱収支に及ぼす雲およびエアロゾルの影響が正確に評価できていないことが挙げられる.そこで,本研究では,太陽光による熱エネルギーの大気乱流中における反射・吸収・透過プロセスに及ぼす雲の影響を,精巧な室内実験および高精度の数値シミュレーションを行うことにより解明することを目的とする.平成21年度の研究実施概要を以下に示す. (1) 単一液滴の内外部流と熱輸送に関する研究:前年度までに開発した,蒸発に伴う外部気流の密度変化を無視した単一液滴の内外部流れを解くための三次元直接数値シミュレーション(DNS)コードを,密度変化の効果を考慮可能なコードへと改良した.また,前年度までに構築した単一液滴の蒸発速度を検討するための実験装置を用いて,レイノルズ数,空気温度および相対湿度を変化させた条件下で実験を実施し,計算結果との詳細な比較検討を行った. (2) 分散二相乱流の熱輸送に関する研究:太陽光による熱エネルギーの反射・吸収・透過プロセスを模擬可能な実験室規模のシミュレーション装置の設計,製作を試みたが,実際の雲に比べて風洞内の乱流が弱く,かつ,液滴径分布および熱エネルギーの計測を既存の測定装置では十分な精度で評価できないことが明らかになった.そこで,太陽光による熱エネルギーの反射・吸収・透過プロセスを模擬可能な三次元直接数値シミュレーション(DNS)コードの開発を行った.現在は,本コードを用いて,熱エネルギーの反射・吸収・透過率に及ぼす噴霧の濃度,層厚み,さらには乱流分散やPreferential Motionの影響解明にめけた検討を進めている.
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