研究概要 |
今年度は, 研究計画にしたがい実験および数値シミュレーションによって研究を進めてきた. 実験においては, 干渉計で得られた干渉縞画像に離散ウェーブレット変換を施して先行薄膜領域を検出するというこれまでの手法に加え, ブリュースター角顕微鏡を新たに導入し, これまで得てきた実験結果をさらに保証する結果が得られたこと, また, 先行薄膜領域形成初期の検出を可能としたことが成果として挙げられる. また, 傾斜基板や所定の温度勾配を付加した基板上での濡れ挙動, 先行薄膜形成過程の研究を行い, その挙動を明らかにした. 傾斜基板を用いた実験により, これまで重力の影響がないとされてきた先行薄膜形成において, 有意な影響を初めて明らかにすることが出来た. また, 温度勾配付加基板上では, 特に低温側への液滴全体の移動に伴い, 液滴後端部(高温側)においてwetting/dewetting時の先行薄膜形成過程を初めて観察することに成功した. 数値シミュレーションでは, 固体基板上あるいはナノワイヤー上での濡れ挙動に関してレナード・ジョーンズ流体を用いてそのdewetting過程を明らかにした. これによって, ある程度の厚みを有する液膜については, マクロ的領域で確立されているRayleigh-Plateau不安定性が適用できること, また薄くなる, あるいは固液間相互作用が大きくなるに従い, マクロ的理論モデルは破綻し, その予測値よりも短い波長で不安定性が生起することを明らかにした. 以上の研究成果を国内外の学会で発表した. また学術論文の投稿準備を行い, 新年度早々に投稿する予定である.
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