研究概要 |
前年度の研究に引き続き,超電導体との反応性が少なく高い超電導フィラメント間横断抵抗が得られるSrZrO_3(加工性改善のためBi_2Sr_2CaCu_2O_xを20wt%添加)をバリア材とする銀シース高温超電導線材について,臨界電流特性と交流電磁特性の評価を行った。最外層に使用する合金シース材をAgMnからAgMgに変更し,バリア層の塗付厚の制御を行うことで,77K・自己磁界下における臨界電流密度J_cは最大値で22kA/cm^2,メートル長線材においても平均J_c=19kA/cm^2を得ることができた。前年度の試作線材(J_c=12-15kA/cm^2)と比較して,内層の純銀シース材との界面付近におけるフィラメントの平坦性が改善されており,これがJ_cの向上に寄与していると考えられる。また,実用的なツイスト構造を有するSrZrO_3バリア線材を作製し,線材面に対する横磁界印加方向を平行および垂直としたときの損失低減効果を77Kにて検証した。ツイスト長(L_t)が15mmとした線材において,平行磁界下での損失は非バリア線材(ツイストなし)の1/5程度(50Hz, 50mT)に低減されたのに対し,垂直磁界下では線材の形状異方性と反磁界効果のため,50Hzでの損失低減効果は殆ど得られなかった。本線材において,垂直磁界下でフィラメント間電磁結合が発生する目安となる結合周波数f_cは25Hz程度であり,商用周波数よりも依然として低いことを確認した。f_c向上に向けてL_tの狭小化を試みた結果,L_t<10mmにおいてf_cは100Hz以上(L_t=5.4mmにて最大380Hz)に増加した。更に,横断抵抗はL_tによらず純銀シース線材の15-20倍程度に向上していることが示唆された。しかしながら,L_t<10mmとした際にJ_cは4-8kA/cm^2と大きく低下してしまった。L_tの狭小化に伴い,外層シース材の破損や線材内層に位置するフィラメント形状の乱れが顕著に発生しており,現在,これを抑制するための線材構造・加工条件の検討を包括的に進めている。
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