高性能液晶ディスプレイに用いる高性能ゲルマニウム系薄膜トランジスタの実現を目指し、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウムの薄膜をマグネトロンスパッタにより成膜した。ゲルマニウム薄膜については、超大型基板への均一成膜が容易に実現可能な回転マグネットスパッタ装置を用いて行った。アルゴンプラズマによるスパッタ成膜では、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウムはそれぞれ300℃、250℃程度から結晶化が起こることが分かった。両者とも、結晶はほぼ(220)配向をしており、結晶化率は50%程度であった。移動度の高い薄膜トランジスタを実現するには、薄膜中のダングリングボンドを水素で終端することが重要である。そこで、通常のアルゴンガスによるスパッタだけでなく、アルゴンに水素ガスを20%添加して励起したプラズマにより反応性スパッタも行った。この反応性スパッタにより成膜したゲルマニウムは、250℃の成膜においても結晶化がほとんど起こらず、アモルファスな膜となることが分かった。これら薄膜を半導体層として、ボトムゲート型の薄膜トランジスタを作成した。表面に熱酸化膜が100nm形成された低抵抗p+-Si基板を用い、この熱酸化膜をゲート絶縁膜とし、バルクの低抵抗Siをゲート電極とした。チャネル長、チャネル幅はそれぞれ4μm、20μmとした。トランジスタを試作した結果、結晶化した薄膜は整流特性が得られずトランジスタとならなかった。一方、反応性スパッタによるゲルマニウム薄膜では、移動度が0.03cm2/V-s程度、オンオフ比は100程度ではあるがトランジスタ動作することを確認し、水素ガスを用いた反応性スパッタの優位性を見出した。今後、Ar水素プラズマ条件の最適化や、ポスト水素ラジカル処理の導入等で更なる性能向上を目指していく予定である。
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