・研究の目的 シリコン集積回路の高性能化をさらに持続させるためには、これまでのスケーリング則とは異なる材料、構造、自由度を用いた新規デバイスの開発が必要であり、キャリアスピン自由度を用いたスピンデバイスが非常に有望である。スピンデバイスとして、特に本研究ではスピン電界効果型トランジスタ(スピンMOSFET)に注目し、これを実現することを最終目的としている。従来のデバイスとシリコンプラットホーム上で融合可能な、高性能シリコンベーススピンMOSFETを実現するためのシリコン中でのキャリアスピン物理の解明をおこなうことを目的としている。 ・該当年度に実施した研究の成果 本研究で実現を目指すスピンMOSFETは、ソースドレイン電極に強磁性体金属を用いる。この時、スピン依存伝導効果と高出力特性を両立するためにシリコンチャネルとの実効的なショットキー障壁高さを低減する必要がある。これを実現するために、(1)イオンインプラによる方法、と(2)結晶成長中のオートドーピング効果による方法、の二つについて試行した。前者はAsを15keVで注入した後にFeを堆積してシリサイド化の方法により強磁性FeSiを作製した。インプラの条件とシリサイド化温度の最適化により、低い反応温度で障壁高さの低減と高出力特性を得られる作製条件を見出した。後者は、エピタキシャル強磁性MnAsの結晶成長をおこない、デバイスの試作とスピン依存伝導効果の測定をおこなった。結果として、50K以下の低温では、スピン依存伝導効果と考えられるヒステリシスが得られた。また、このヒステリシスが得られるバイアス範囲をプロットして、シリコン二次元電子チャネルにおけるスピン拡散長について考察を行った。
|