異方性磁界の大きな次世代垂直媒体の記録方式として、マイクロ波アシスト磁化反転(MAMR)が注目されている。しかし、垂直磁化膜パターンに対するMAMRの検証はこれまでまったく報告されていない。本研究の目的は、垂直磁化膜パターンのMAMRに求められる諸条件を実験的に明らかにすることにある。本年度は、MAMR実験に適した垂直磁化膜パターンの作製と、ネットワークアナライザFMR分光法を用いた垂直磁化膜の磁化反転検出を試みた。以下に成果をまとめる。 (1)最大6kOeの直流磁界を印加可能なマイクロ波プローバ装置を作製し、これに40GHzネットワークアナライザと40GHz信号発生器を接続したMAMR検出実験装置を組み立てた。 (2)スパッタリング条件を最適化することにより、保磁力および異方性磁界がそれぞれ1.2kOeおよび17kOeの垂直磁化膜([Co(1.7Å)/Pd(8Å)]_<20>多層膜)を作製することに成功した。この垂直磁化膜を10×100μm^2に微細加工し、ネットワークアナライザFMR分光法によりその強磁性共鳴特性を調べた。FMRスペクトルの線幅からダンピング定数α(スピン系に作用する摩擦の大きさを表すパラメータ)を測定した結果、0.06〜0.08となり、MAMR実現に必要な条件(α<0.2)を満足していることを確かめた。 (3)保磁力以下の直流バイアス磁界下で垂直磁化膜パターンのFMR周波数を測定することにより、マイクロ波磁界の印加による磁化反転を検出することに成功した。
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