研究課題
本年度は、透過磁場50kOe以上の垂直磁気異方性を持つ強磁性薄膜パターンに軟磁性層を交換結合させた複合構造膜のマイクロ波アシスト磁化反転特性をマイクロマグネティクス計算により詳しく調べた。さらに、ハードディスクへの適用可能性を探るため、マイクロ波アシスト磁気記録方式の記録シミュレーションを行った。研究成果を以下にまとめる。(1)交換結合膜の結晶粒(粒径5nm)について、マイクロ波アシスト磁化反転特性を調べた。軟磁性部の厚みが交換長に比べて十分に小さい場合には、軟磁性部と硬磁性部の磁化が同位相で磁化回転する。これに対し、軟磁性層厚が交換特性長と同程度の場合には、各層の磁化がそれぞれの特有周波数で大きく振幅することが分かった。(2)軟磁性層厚が交換特性長と同程度のピラーに軟磁性層の固有周波数程度のマイクロ波磁場を与えると、まず軟磁性層の磁化が大きく歳差運動する。その結果、複合構造膜の接合界面で交換エネルギーが増加し、磁化ねじれ構造が伝播することにより、硬磁性層が磁化反転に至る。この特徴的な磁化反転機構により、磁化の反転に必要な交流磁界強度およびマイクロ波周波数は、硬磁性体のみ場合(80GHz)と比較して大幅に低減(15GHz程度)されることが分かった。(3)記録媒体の飽和磁化が大きな場合には静磁気相互作用磁界の影響により記録ビット内部に逆磁区が発生し易く、再生時のSN比が低下する傾向があることが分かった。交換結合ピラーのマイクロ波アシスト磁化反転シミュレーションでは、20GHz以下、2kOe以下の強度のマイクロ波アシストで、90kOe程度の磁気異方性磁界を有する硬磁性体の磁化も反転させることができると予測される結果を得た。
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