研究概要 |
多端子の場合での量子情報処理について調べるために,多端子系の量子もつれ状態の度合いを表す量である幾何学的測度の注目した.多端子の情報処理の場合,異なる端子に跨る量子処理を行うことができないことが考えられる.このような場合,端子間のエンタングルメントは量子効果を生かした処理を行うための資源として考えることができる.従って,エンタングルメントの度合いを表す幾何学的測度は量子情報処理を行うことのうまみを表わしていると考えることができる. はじめに,対称性を満たす状態の場合に簡便な公式を与えた.さらに,この量について加法性について調べた.その結果,係数が正値となる場合について,加法性が成り立つことを示した.この成果を用いて,Dicke状態,最大相関ベル基底状態,Smolin状態,Dur状態の場合に加法性が成り立つことを示した.この結果を用いて,Dicke状態について漸近的エンタングルメント相対エントロピーについても計算した.一方,係数が正値とならない場合についても考察し,そのような場合には,加法性が成り立たないことの方が一般的であることを確率的手法を用いて示した.特にその典型例として,反対称状態に注目した.この場合に,2コピー状態の幾何学的測度と1コピー状態の幾何学的測度について計算し,両者を比較することで,加法性が成り立たないことを具体的に示した.この事実は,ほとんどの場合2コピー状態は幾何学的測度の意味で,エンタングルメントが小さいことを示している. 一方,先行研究により,ほとんどの量子状態はエンタングルが強すぎて1方向量子計算と呼ばれる多端子量子情報処理には向かないということが指摘されている.しかしながら,本結果そのため,2コピー状態を用いると,エンタングルメントの度合いが抑制でき,1方向量子計算に適していることが期待できる.
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