研究概要 |
本研究は,セメント硬化体の水和物相組成および細孔溶液組成,ならびに外部環境水中の組成の影響を,多種イオンの相平衡を考慮した熱力学モデルにより記述することで,任意の材料および配合を有する各種セメント系材料の多種多様な外部条件に対する耐久性能の評価手法を構築することを目的としたものである,セメント系材料の劣化現象として,特に炭酸化および溶脱に着目した. まず,炭酸化に関しては,初期養生の影響に関する検討を系統的に行い,異なる水セメント比,あるいは高炉スラグ微粉末を混和材として使用した場合の水和物の形成および炭酸化進行を調べた.また,空隙構造を水銀圧入式ポロシメータで計測するとともに,酸素拡散係数の測定によって物質移動抵抗性の変化を調べた.加えて,リートベルト解析を用いて水和物の組成を解析した。そして,水和物および炭酸化反応生成物の相組成を元にした,空隙構造や酸素拡散係数の予測手法の提案を行った。また,熱力学モデルによる評価を検討した。 また,溶脱に関しては,一般のコンクリートと比較して劣化進行の早いポーラスコンクリートやセメント改良土を対象とした実験を行い,溶出イオンの分析を行った.加えて,周辺の地盤材料とセメント系材料との境界部における相互作用に関して,複合供試体を作製し,電気泳動法や浸漬試験により変質挙動を詳細に分析した.化学的な反応機構の分析のため,炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムを事前に周辺地盤(ベントナイト)に混合をしておくことによって,境界層に炭酸カルシウムが生成し,劣化が抑制されるメカニズムも明らかにした.また,ベントナイトとフライアッシュあるいは高炉スラグ微粉末との反応やその影響についても分析し,新たな材料開発の方向性も検討した.
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