一見したところ地球にやさしいバイオ燃料であるが、その増産は、世界水資源の不安定化や、それによる食糧セキュリティの不安定化などの恐れを孕んでいる。本研究では最終的には、受容可能なバイオ燃料作物の増産可能量を示したい。すなわち本研究の究極の「問い」は、「今後の想定される人口増加、経済発展、気候変動の下で、食糧セキュリティも踏まえた上で、どの程度までのバイオ燃料の増産ならば水資源の持続可能性の面から見てacceptableであるか?」というものである。これに答えるためには、様々な想定の下での食料・農業に関わる複数の未来社会シナリオが必要である。また、統合水資源モデルを用いて、それぞれのシナリオ下における世界各地域の水ストレスや、そこから推定される持続可能性や食糧生産への影響などを算定することも必要である。本年度は最終年度であることから、まず複数の様々な食料・農業に関わる未来社会シナリオを作成した。次いで統合水資源モデルを用いて、それぞれのシナリオ下における世界各地域の水ストレス・食料需給の逼迫などを算定した。また、全球統合水資源モデルの改良として、特にバイオ燃料のもととなる農作物の収量のシミュレーションについて、さらにvalidationとcalibration、境界条件の整備などを進めた。その上で、過去数十年の水循環および水資源と農作、そして将来の水資源と農作の試算を行った。最後に、統合水資源モデルの出力を利用し、様々な条件下での収穫バイオエネルギー量を求めた。
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