研究概要 |
本年度の研究実績は主に以下の2つである.第一に,構造改革特区や地域再生計画などの提案型制度が地域計画の策定プロセスに及ぼした影響について調査を行った.具体的には,東北6県の全市町村を対象とするアンケート調査と,提案型制度を有効活用している6つの市町村(岩手県軽米町・二戸市・遠野市,山形県喜多方市・鶴岡市,福島県桑折町)についてヒアリング調査を行った.調査・分析結果から,人口の多い市町村ほど提案型制度の利用実績が多いものの,人口規模で層別化すると人口増加率や財政力指数の低い地域ほど利用実績が多いことが明らかになった."地方分権の社会実験"とも呼べる提案型制度の利用実績の事後評価はこれまで十分に行われていない.公開されているデータを整理・加工して実施した以上の実証分析から得られた成果は,今後の地方分権化のあり方を考える上で有益な知見を与えるものである. 第二に,規制改革の意義と弊害の事後評価の方法論の開発に取り組んだ.具体的には,自動車車検のデータを用いて規制改革が及ぼす弊害を定量的に把握することを目的とする統計分析を行った.約50万台の自動車について,67の点検項目の基準適合性の検査結果が記録されいてる大規模な統計データを用いた実証分析の結果から,国土交通省が車検制度の見直しを念頭に行った実証分析の信頼性が低いことが明らかになった.本研究で得られた成果は,規制改革のRIA(Regulatory Impact Analysis)のあり方を考える上で有益な知見を与えるものである.
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