研究概要 |
本年度は,1)東日本大震災の復興方法の一つとして検討されている総合特区制度の利活用の意義と限界について検討することと,2)平成22年度に実施した車検制度の規制影響分析に関する定量分析手法を改良し,車検制度のデザインについて理論的に分析すること,の2つを目的として掲げた.前者については,震災後の政策プロセスが流動的かつ不透明であったことと,復興特区制度が提案型とは必ずしも呼べない制度であったことから,十分な分析を行うことができなかった. 一方,後者については,車検制度の規制影響分析に関する定量分析手法を改良し,車検制度のデザインについて理論的に分析した.車検制度は交通安全と環境汚染の抑止を目的としており,現代の高度自動車社会において必要不可欠の制度といえる.自動車利用者の負担が大きいため,検査・点検整備に関わる規制緩和の是非が常に議論されている.車検制度の合理的なデザインには,自動車の点検整備の記録データを用いた規制影響分析の実施が有効であり,また,構造改革特区の枠組みを利用して期間や地域を限定して社会実験を行えば更に合理的な判断が可能になると考えられる.規制影響分析は,社会実験の必要性を検討する上でも有用であることから,本研究では車検制度の規制影響分析に関する定量分析手法を改良し,車検制度の見直しに向けた社会実験のデザインについても理論的に分析した.分析の一環として,車検制度が自動車から大気中に排出される汚染物質の排出量に与える影響も定量的に評価した.分析結果として,国土交通省が2006年に実施した規制影響分析の推計値は過大であり,自動車検査証の有効期間の延長が大気環境に与える影響はそれ程深刻でない可能性が示された.
|