研究概要 |
本研究では,地震応答時のエネルギー吸収を主に担う梁部材を対象に,ひび割れ後から曲げ降伏までの履歴,減衰性状を調べるため,繰り返し載荷実験を行った。実験では,RC梁試験体と鉄骨試験体を各3体作製した。RC梁試験体は,いずれも曲げ降伏先行型とした。曲げ降伏前の履歴に影響すると考えられる付着特性の違いを見るため,実験パラメータは,主筋径(D13, D19)とコンクリート強度(18,27Mpa)とした。また,鉄骨試験体は,履歴曲線から載荷装置の減衰特性を排除するために比較する試験体として作製した。鉄骨の剛性は,RC梁試験体の曲げひび割れ前,曲げひび割れ後,(曲げひび割れ強度と曲げ降伏強度を平均した強度での剛性),曲げ降伏時の3種の剛性を想定したものを用いた。また,RC部材の代表的な履歴モデルであるTakedaモデル,原点指向型モデルを用いて,復元力特性を模擬し,載荷装置の影響を排除した実験結果と比較した。実験と解析の結果より,次の結論を得た。1)曲げ降伏前においては,付着強度の差による等価粘性減衰定数の違いはほとんど見られない。2)曲げ降伏前においては,Takedaモデルは載荷1サイクル目の等価粘性減衰定数を概ね正確に評価できるが,繰り返しによる減衰定数の減少は適切に評価できない。原点指向型では,曲げ降伏前,曲げ降伏後ともに過小評価となる。3)曲げ降伏前における履歴減衰の発生の原因として,付着の劣化が考えられる。
|