研究概要 |
本研究では,鉄筋コンクリート部材の塑性化に伴う付着劣化が履歴性状に与える影響を明らかにすることを目的として,6体の鉄筋コンクリート梁試験体の静的載荷実験を行った。試験体の柱寸法は250mm×350mmとし,パラメータは付着割裂破壊が生じる時の付着強度である付着信頼強度τ_<bu>%設計用付着応力度τ_<f>比(付着余裕度)およびコンクリート圧縮強度(25N/mm^2と50N/mm^2),主筋の定着の長さとした。付着余裕度は鉄筋本数により変化させたが,鉄筋比は全試験体で同一となるようにして,曲げ降伏先行するように設計した。1体のみ主筋の定着長さを規準の半分(15d)として製作した。載荷は水平変形角による制御とし,付着劣化の比較を詳細に行うため,所定の変形角で3回ずつ繰り返した。実験の結果,全ての試験体で,最終変形時までに梁主筋が降伏する曲げ降伏型の破壊性状を示したが,終局時の破壊性状は付着余裕度によって異なる性状を示した。付着割裂強度が小さい試験体では,終局時に付着割裂破壊を生じたが,その他の試験体では曲げ破壊を生じて終局に至った。曲げ降伏した試験体におけるひび割れ性状の差異は確認できなかった。曲げ降伏前の履歴性状において,試験体間に明確な差異は見られなかったが,曲げ降伏後の除荷時の履歴曲線は付着余裕度の大きい試験体で付着強度の減少に伴うスリップ型の形状を示した。部材のエネルギー消費率を表す等価減衰定数は,いずれの試験体においても,繰り返しの回数が増えるほど減少した。付着余裕度が大きな試験体ほど等価減衰定数は大きく,部材の履歴性状と付着余裕度には相関性が認められ,付着劣化が履歴減衰に及ぼす影響を定量的に評価できる可能性を示した。なお,規準の半分にした主筋の定着長が履歴性状に及ぼす影響は確認できなかった。
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