今年度は宮城県のN病院を対象として調査を行った。N病院は、1つの病棟が4つのクラスターから構成されており、1階は認知症病棟、2階は2ユニットの精神療養病棟、3階は精神一般病棟である。また、精神一般病棟のみ個室の構成が他と違い完全個室になっている。今回は異なる病棟患者の空間利用状況の相違及び在院期間の違いよる患者の生活行動の変化を明らかにすることを目的としている。調査は2008年9月11日に療養病棟、25日に認知症病棟及び精神一般病棟を対象に行い、8〜20時の間に15分ごとに患者全員の位置と行為を平面図に記入する行動観察調査を主な調査方法とした。すべての病棟で在院期間が5年以上を経過している患者が6割以上おり、患者の大半力弐長期入院患者といえる。 今回の調査を通して、以下のことが明らかになった。(1) 個室の構成が完全個室型の一般病棟では、病室内およびそのまわりでは患者が交流をもてる空間がないため、デイ空間が主に患者の交流の場所としてとらえられる傾向がある。(2) 在院期間と患者の交流時間割合において、在院期間が長い患者は他人との交流時間が少ない傾向にあり、実際の調査時の様子を見ると、そういった患者は一人で好きなことをするか、寝たきりあるいはコミュニケーションがまったくとれない状態である。(3) 認知症病棟のような高齢の患者が多い病棟は、在院期間が長いほど高齢である可能性が高いので、その活動レベルは在院期間が長いほど低くなる。したがってその行動タイプは、自室滞在型あるいは共用滞在型が増え、利用する空間が最低限の空間に収まってくるのではないかと考えられる。(4) 精神療養病棟西のような患者全体の活動レベルが高い病棟では、在院期間が長くなるにつれて患者の活動範囲が広がり、病棟内の多くの空間を利用する傾向にある。来年度からは全国範囲のアンケート調査および行動観察調査を行う予定である。
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