研究概要 |
本研究においてはFePt/B2O3の層状膜を用いることで, FePtの規則化およびc軸配向を促し, その結晶磁気異方性を利用した垂直磁化膜の作製を目的とした. さらにそのc軸配向のメカニズムについて実験を行い考察, 検証を行った. また, FePt/B2O3の層状膜に対して強磁場中での熱処理を施すことによりFePt粒子のB2O3マトリクス中での孤立分散を図った. 熱処理温度を550℃に固定し, 様々な時間の等温保持を行い熱処理時間依存性について調べた. その結果, 規則化の程度に差はあるものの全ての試料でc軸配向の傾向が見られ, c軸の配向には熱処理時間依存性は少ないことが分かった. また全ての試料において軸比の減少があり, FePtには面内方向に引張応力が掛かり, 歪んでいることが分かった. 550℃1hの等温保持の後, 様々な冷却速度で室温までの冷却を行い250℃/min以上の冷却速度ではFePtのc軸配向は起こらないことを明らかにした. またこのことから, FePtの規則化, c軸配向は冷却段階において生じていることと結論づけた. また, c軸配向には平面応力状態であることが必要であることも明らかとなった. 上記の結果をもとに考察を行い, 平面応力状態を仮定し, 実験による軸比の値から1100[MPa]の平面引張応力を見積もった. またこの平面引張応力はFePtとB2O3の熱膨張率差に起因していると考えた. そして見積もった平面引張応力の下での弾性歪エネルギーと, 規則化に際しての歪と外部応力との相互作用エネルギーを見積もり, 面直方向にc軸配向した状態が最も安定であることを示した. 磁化測定の結果, 磁場中で550℃1hの等温保持を施した試料は磁気異方性を示し, 保磁力は12kOeであった. 現在は同様の配向を目指し, 誘電体SrTiO3を強誘電体膜に強制的に構造相転移させるため, Sn中でのSrTiO3の製膜とその配向について取り組んでいる.
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