研究概要 |
本研究では,異方性結晶のバリアント配向制御を行なう従来の単結晶基板上へのエピタキシャル成膜を利用する手法とは全く異なる,異種物質問の熱的粘弾性応力を利用する新規な配向制御法を提案する.この新手法をFePt, CoPtやFePdなどのL10型規則格子磁性ナノ粒子のc軸面直配向などのナノ粒子のc軸配向に応用し,弾性理論や熱力学および実験の両側面から研究する. 目的物質のナノ粒子を基板上あるいは多層膜間に成膜した低融点ガラス中に埋め込み,ガラスの軟化温度以上で適合フィットさせ,冷却する際に熱収縮率の差によって生ずる粘弾性応力を,薄膜特有のバイモーダルな(二次元平面応力)条件で利用することで,あたかも一軸性の異方的な外部応力を負荷したような状態を作り出し,その応力効果によって結晶・バリアント配向を制御する.さらに,外部磁場などによりナノ粒子を磁化させた状態に保ち,粒子間に及ぼしあう双極子反発相互作用を利用することによって(ボルテックス格子のように)規則配列させる. FePt, CopTとB203の組み合わせでは,2次元応力の効果により容易磁化軸c軸が面勅配向することが我々の研究から明らかとなっていた.これは,熱応力によって起こると考えることが示唆れた.しかし,FePdの場合には,基板Siとの合金化反応やまたB203との反応により,FePdを配向させることは困難であった.そこで,FePdの場合にはFeとの相分離を積極的に利用し,Soft磁性とHard磁性の交換結合および静磁結合を利用した新しい垂直磁化膜を作製する試みも行った.ガラスのときと同様,2次元応力状態をFeマトリクス中で形成させ,FePdの垂直スプリング磁化膜を作製することに成功した.
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