本研究では、外部刺激応答性の新規なカプセル材料の創成を目的とする。コロイド粒子をテンプレートに用いた交互積層法と無機材料の水溶液プロセスによる合成法に着目し、外部刺激応答機能を有する有機-無機ハイブリッド型のインテリジェント中空カプセルの作製を行う。特に、高分子電解質層の表面状態の無機結晶の溶液プロセスからの析出への影響などを明らかにし、光、磁場等の外部刺激に応答して、内包物を放出する機能の発現を図る。3年間の研究計画の初年度にあたる本年度は以下のような成果を得た。 コロイド粒子を鋳型にし、その表面を高分子電解質の多層膜を積層してコアーシェル粒子を作製し、鋳型粒子の除去により中空カプセルを作製した。このカプセルに脂質二分子膜をコートすることで、カプセル内部に機能性低分子を封入することに成功した。標識物質として色素を封入した脂質二分子膜/高分子電解質多層膜複合中空カプセルをさらにSiO_2-TiO_2ゲル層でコートしたハイブリッドカプセルを作製して、紫外線照射による内包物の放出特性について評価したところ、紫外線照射でカプセル殻が開裂し、色素が放出されることが明らかになった。この際に、紫外線の照射時間やその強度と放出速度が変化することが分かった。さらに、Pdナノ粒子を触媒として高分子電解質多層膜上にFe_3O_4ナノ粒子を水溶液から析出させて、Fe_3O_4/脂質二分子膜/高分子電解質ハイブリッドカプセルの合成に成功した。このカプセルに色素を封入し、交流磁場を印加すると、Fe_3O_4ナノ粒子の発熱によって脂質膜の物質透過性が変化し、内包物をオンデマンドで放出することが確認された。これらの結果から、医薬品、化粧品、電子デバイス等様々分野に展開可能な外部刺激応答性の有機-無機ハイブリッド中空カプセルの創成に成功した。
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