本研究の目的は、高耐食高強度Mg合金の開発であり、急速凝固、および動的・静的再結晶現象、動的・静的析出現象等を利用して合金内部組織を制御することで電気化学的な組織の均質化を図り、マクロなバルバニック腐食を制御し、不働態化現象を引き出す事を試みた。 平成20年度は、Mg-Zn-Y合金の急速凝固薄片固化成形技術を確立するとともに、不働態化する合金組成および、必要な冷却速度を調査した。結果、Mg_<97.25>Zn_<0.75>Y_2(at%)を中心とした組成域において、3.0×10^4K/s以上の冷却速度で凝固させることにより、急速凝固材は過飽和固溶体単相となり、その後の急速凝固薄帯を押出固化成形する際に長周期積層構造分散ナノ結晶組織が形成されることで、そのお次第固化成形材も高い耐食性と優れた機械的特性を示すことが明らかとなった。マグネシウム金属の塩水環境下の腐食は主に糸状腐食の進展により腐食が進行するが、適当な合金組成を冷却速度で凝固させることで糸状腐食の発生を抑制することが出来ることがわかった。 また更に、Mg_<97.25>Zn_<0.75>Y_2合金へAlを微量添加することで、糸状腐食発生時間が長時間化し、耐食性がより向上することも明らかとなった。これは、Al添加Mg_<97.25>Zn_<0.75>Y_2合金は三元系合金に比べ、塩水中のアノード分極曲線測定において不働態電位域が拡大している、すなわち孔食電位が貴な方へ移行していることから、耐食性を有する皮膜の形成によるものと考えられた。
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