本研究の目的は、高耐食高強度Mg合金の開発であり、急速凝固、および動的・静的再結晶現象、動的・静的析出現象等を利用して合金内部組織を制御することで電気化学的な組織の均質化を図り、マクロなバルバニック腐食を制御し、不働態化現象を引き出す事を試みた。平成21年度は、(1) Mg-Zn-Y系およびMg-Zn-Gd系鋳造合金の時効析出挙動およびその押出材の動的再結晶挙動と耐食性との関係を調査するとともに、(2) 平成20年度の急速凝固材を用いた研究結果より優れた耐食性を発現する合金組成Mg-Zn-Y-Alの鋳造押出材の腐食皮膜形成について調査した。 1. 原子間力走査顕微鏡のケルビンフォースプローブモードを用いて合金の表面電位測定を行うことで、合金の内部組織と耐食性の関連を構成相の表面電位差で整理したところ、Mg-RE(RE:希土類元素)化合物の種類によって、α-Mg母相との表面電位差が大きく異なり、耐食性、特に糸状腐食の発生時間に大きく影響することが明らかとなった。 2. Mg_<97>Zn_1Y_2合金へAlを微量添加することで、糸状腐食発生時間が長時間化し、耐食性がより向上することが明らかとなった。形成される皮膜のFE-SEM断面観察及びEDS分析によりAlの表面皮膜への濃化が確認されたこと、そしてAl添加Mg_<97.25>Zn_<0.75>Y_2合金は三元系合金に比べ、塩水中のアノード分極曲線測定において孔食電位が貴な方へ移行していることから、Al添加による皮膜改質が示唆された。
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