平成20年度は、これまでに本代表者らが開発したHZSM-5ゼオライト担持レニウムクラスター触媒を基にして、新しい触媒調製法の開発を行い、ベンゼンと酸素からのフェノール直接合成反応の触媒性能を飛躍的に増加させることに成功した。これまでは、昇華性を有するメチルトリオキソレニウムを前駆体として化学気相蒸着(CVD)法によりレニウム前駆体をゼオライトの細孔内に導入し固定化する方法を用いていたが、酸点の数や種類を変えたゼオライトを用いても高いフェノール選択性を保ったまま、ベンゼン転化率を飛躍的に増加させることが出来なかった。そこで、レニウム前駆体、担体となるゼオライトの種類の検討に加えて、レニウム以外の第2金属種の添加を検討し、特に簡便ではあるがこれまでは極度に触媒活性、フェノール選択性が低かった含浸法を用いた触媒調製法による担持レニウム触媒の調製を検討した。その結果、プロトン型ではなく、アンモニウムイオンタイプのHZSM-5ゼオライトを担体とし、レニウムに加えて少量の白金を添加すると、含浸法を用いた触媒調製でも、ベンゼンからのフェノール合成定常反応において、ベンゼン転化率30%、フェノール選択性93%(世界最高)を示す新型担持レニウム-白金触媒の調製に成功した。ICP、XRF、XRD、ラマン分光、Re L_<III>端およびPt L_<III>端XAFSを用いた構造解析を行い、ZSM-5ゼオライトに担持された担持レニウム種、白金種の構造解析も行い、定常的に触媒活性を維持するために必要なアンモニアによって、レニウムの還元クラスター化が進行し、触媒活性種が形成されることが明らかになった。
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