研究概要 |
塩酸溶液からのロジウム抽出は、金属の溶媒抽出分野において最も困難な操作の一つであるが、これまでの研究により、3級アミンにN, N-二置換アミド基を導入した化合物が、ロジウムに対し高い抽出特性を示すことが分かった。本年度は、抽出機構の解明を進めるために、3級アミンにN, N-二置換アミド基を1個導入したN-ジ-n-ヘキシル-(N-メチル-N-n-オクチル-エチルアミド)アミン(DHMOEAA)、2個導入したN-n-ヘキシル-ビス(N-メチル-N-n-オクチル-エチルアミド)アミン(HBMOEAA)、3個導入したトリス(N-メチル-N-n-オクチル-エチルアミド)アミン(TMOEAA)、及び比較としてトリ-n-オクチルアミン(TOA)を用いて塩酸の抽出を行った。得られた見かけの塩基性は、TOA>DHMOEAA>HBMOEAA〓TMOEAAとなり、ロジウム抽出率の大きさ(TMOEAA>HBMOEAA>DHMOEAA>>TOA)とは異なる結果が得られた。また、N-n-ヘキシル-ビス(N-メチル-N-フェニル-エチルアミド)アミン(HBMPEAA)と塩化ロジウムとの単結晶を作成しX線構造解析を行ったところ、HBMPEAAは三座でロジウムに配位しており、EXAFS測定等で得られた溶液系錯体の構造(抽出剤が金属に配位していない)とは差異がみられた。 ルテニウム(III)、インジウム(IV)についても、HBMOEAAによる塩酸溶液からの抽出を行ったところ、両者ともロジウムと類似した抽出挙動を示した。 また、HBMOEAAを用いると、実液に近い高濃度のロジウム溶液に対しても、抽出剤の約半分のモル濃度の金属を抽出可能であった。さらに、長期間(3か月以上)高濃度塩酸と接触し続けても抽出剤の劣化は見られなかった。
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