生物界において個体、また個体を構成する器官、組織、細胞などのサイズがいかに決定されるかという問題は基礎、応用研究上非常に重要であるが、その制御機構についてはほとんど解明されていない。本研究はこの問題を特に植物の器官サイズ制御の視点から明らかにすることを目的としている。植物の器官サイズは外因性、内因性の様々な要素からなる複雑な制御ネットワークによって規定されている。今年度の研究ではモデル植物シロイナズナのgain-of-function突然変異体コレクションであるFOXライン(Full-length cDNA Over-eXpression line)を用いてこれらのネットワークに関与する遺伝子群を同定すること、またそれらの機能解析を通して高等植物の器官サイズを決定する制御システムの一端を解明することを目指した。今年度はまずこれまでに単離されたた13系統の器官サイズ突然変異体について予想される原因遺伝子の野生型への再導入を行い、過剰発現によって表現型が再現できる10系統を確立した。さらにそれらの原因遺伝子のin vivoでの発現解析、またloss-of-function変異体の表現型解析を進めた。Pizza変異体及び、win d farm変異体についてはさらに既存の関連変異体との2重変異体を作成し、これまでに報告されている制御ネットワーク内でのPIZZA及びWIND FARMの位置づけについて検討した。またさらにこれまで未解析であった250系統のFOXラインを用いて器官サイズ変異体スクリーニングを行い、器官サイズ決定に関わることが予想される新規因子を同定した。これらの成果は今後器官サイズ制御をさらに明らかにしていくための重要な知見をもたらした。
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