tRNAアンチコドン一文字目のヌクレオシド修飾は、コドンの揺らぎと密接に関連しており、正しいタンパク質を生合成する上で極めて重要である。グルタミン酸、リジン、グルタミン、ロイシン、アルギニンに対応するtRNAのアンチコドン1文字目のウリジンは、全ての生物において修飾を受ける。真正細菌ではウラシル塩基5位のカルボキシメチルアミノメチル化もしくはメチルアミノメチル化修飾が確認されている。ウラシル塩基5位の修飾には複数の酵素が関与し、まず、MnmEとGidAが共同的に働くことによって、5位にカルボキシメチルアミノメチル基を付加する。次に、MnmCが、カルボキシメチルアミノメチル基をメチルアミノメチル基に変換することが知られている。本研究では、結晶構造解析と変異体機能解析から、ウラシル塩基5位の修飾メカニズムを解明することを目的とする。これまでに、GidAを精製・結晶化し、SAD法によって結晶構造を決定した。構造解析の結果、GidAに補酵素FADが強固に結合していることが明らかとなった。次に、FAD結合部位近傍に存在する保存されたアミノ酸残基に変異を導入しin vivoもおける相補実験から、触媒に関わる二つのシステインを同定した。また、ゲルシフト解析から、GidAがtRNAと強く相互作用することを明らかにした。これらの結果から、反応過程においてtRNAのアンチコドン一文字目のウリジンは、触媒システイン残基の近傍に配置されることが示唆され、GidAがチミジル酸合成酵素と類似の機構でウリジンの5位を修飾することが推定された。
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