我々の研究室はこれまでの研究で、細胞分裂装置・スピンドルを構成する微小管を増幅し、染色体を正確に姉妹細胞へ分配するために必要なタンパク質複合体「オーグミン」をショウジョウバエおよびヒトより同定した。オーグミン複合体は8つのサブユニットから構成されていたが、いずれのサブユニットもその一次構造からは分子活性を予測することはできなかった。したがって、平成21年度は、オーグミンの分子活性を明らかにするという目標に向け、オーグミン複合体の精製を目指した。まず、ショウジョウバエのオーグミンの各サブユニットを大腸菌およびバキュロウイルスシステムにより大量発現したが、いずれも可溶画分にタンパク質は得られなかった。そこで、全8サブユニットを共発現してみたところ、大腸菌発現系ではなお可溶画分にオーグミン複合体を認めることはできなかったが、バキュロウイルス発現系で複合体が部分的に可溶化し、これをアフィニティー精製法およびゲル濾過クロマトグラフィーにより精製することができた。得られた精製オーグミンを試験管内で微小管と反応させたところ、微小管に直接結合した。同様の手法を用いて、ごく最近、低濃度ながらヒトのオーグミン複合体の精製にも成功した。これらの研究成果は、スピンドル微小管の生成過程を試験管内で再構成するという目標に向けた重要な一歩であり、今後、オーグミン結合因子であるγチューブリン複合体の精製も試みたい。
|