我々の研究室はこれまでの研究で、細胞分裂期中期スピンドルにおいて、中心体に依存しない微小管生成機構とその重要性を明らかにしてきた(Uehara et al. Proc Natl Acad Sci USA 2009など)。平成22年度、我々は、生成した微小管を十分な長さにまで重合するのに必要な新規遺伝子に着目して研究を進めた。 ショウジョウバエの培養細胞でこの遺伝子産物の細胞内局在を調べたところ、細胞周期を通じて、伸長する微小管の先端(プラス端)に局在していた(この因子を「センティン」と命名した)。センティンをノックダウンすると微小管のプラス端ダイナミクスは劇的に抑制された。細胞内での免疫沈降実験や精製タンパク質を用いた試験管内結合実験により、センティンが微小管の先端重合・脱重合のマスターレギュレーターであるEB1タンパク質と直接相互作用することを見出し、また、この結合がセンティンの機能に重要であることをキメラ遺伝子を用いた実験で明らかにした。EB1はこれまで、微小管ダイナミクス制御の中心プレイヤーであることがわかっていたが、EB1自体に強い微小管重合・脱重合活性は見出されておらず、実際にどのようなメカニズムで微小管の制御をしているかは不明であった。我々の研究結果は、EB1がセンティンというこれまで未発見だったタンパク質を微小管先端にリクルートすることで微小管の制御を行っていることを示している。さらに我々は、センティンがチューブリンダイマーと結合すること、試験管内で微小管の重合速度を上げることも見出しており、微小管ダイナミクスの制御機構について新しい知見をもたらしたと考えている。本研究成果は2011年4月現在、学術論文として投稿中である(Li et al.)。
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