タバコのrgs-CaMタンパクが植物ウイルスのRNAサイレンシング抑制タンパク(RSS)と相互作用してウイルスの侵入を感知し、防御機構を活性化する宿主のウイルスセンサー(PAMPs受容体)であるという仮説について、下記の点について検証した。(A)rgs-CaMはHC-Proおよびキュウリモザイクウイルス(CMV)の2b以外のRSSと結合するのか。(B)rgsCaMの高発現がどのように宿主植物のウイルス病抵抗性を高めたり、えそ斑様の細胞死を誘導するのか。その結果、(A)Tomato bushy stunt virusのRSS、P19とは結合しなかったがトマトアスパーミウイルスとヒト免疫不全ウイルスのRSS、2bおよびTatとの結合が生体分子間相互作用解析装置(BIACORE)で検出され、普遍的にRSSと結合する可能性が考えられた。またタバコBY2のプロトプラストを用いた免疫組織染法(Proximity Ligation Assay)で細胞内のrgs-CaMとCMV 2bの結合を検出することができた。(B)昨年、ウイルスベクターを用いてrgs-CaMを高発現したタバコはCMVの接種葉での増殖、全身への移行を抑制して抵抗性が高まっていることが示唆された。今年は作製したrgs-CaM過剰発現した形質転換タバコにCMVを接種してウイルスに対する抵抗性について検証したところ、やはりウイルスに対する抵抗性が高まっていた。これらrgs-CaM過剰発現タバコに、えそ斑様の細胞死の見られる株があり、マイクロアレーで網羅的に病原性関連PR遺伝子の発現を調べてみたところ、野生タバコと有意な差は見られず、このえそは過敏感反応(HR)様の反応による細胞死ではないことが分かった。そこで、来年度はrgs-CaMは直接、結合するRSSの活性を阻害してウイルス病抵抗性が高まっている可能性について検証を進める。
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