研究概要 |
本年度は、昆虫の脱皮・変態の「質」や「タイミング」を決定する分子機構を解明するために、カイコの眠性変異体の原因遺伝子のポジショナルクローニングを展開した。mod(2眠)、rt(劣性3眠)、M(眠性)の変異体それぞれについて、正常系統(ゲノム解析標準系統p50T)とのBC1個体を作成し、定法に基づいて原因遺伝子のファインマッピングを行った。その結果、それぞれの責任領域を300kb, 400kb, 40kbに絞り込むことに成功した。正常系統と変異体の間で、責任領域内に存在する遺伝子の構造比較を行ったところ、有力な候補遺伝子の単離に成功した。mod系統については、トランスジェニックカイコを用いたレスキュー実験を進めている。すなわち、mod系統に野生型のアリルを導入することで、眠性が正常に回復するかの検証を行っている。rt, M系統については、モデル甲虫であるコクヌストモドキを用いたRNAi実験による検証を試みている。また、UAS異所発現法によって新規の眠性変異系統の単離も試みた。UAS異所発現ベクターをゲノム内にランダムに転移させ、その後Actin-Gal4系統と交配することでゲノム中の遺伝子をランダムに強制発現させたものの、これまでのところ眠性に変化の生じた個体の単離には至っていない。昆虫の幼虫脱皮の回数がどのように決定されるのか、その分子機構はほとんどわかっておらず、さらに、眠性変異体もカイコ以外ではほとんど知られていないため、本研究の成果は極めて大きな意義を持つものであると考えられる。
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