研究概要 |
本年度は、カイコの眠性変異体のうちmod(2眠),M3(3眠)について集中的な解析を行い、その原因遺伝子の機能解析を行った。modについては、前年度までに同定した候補遺伝子が真にmodの原因遺伝子かを検証するため、トランスジェニックカイコを作出し、レスキュー実験を行った。すなわち、mod/modホモをバックグラウンドとするカイコ系統において、GAL4/UASシステムを用いて候補遺伝子を発現させた。GAL4系統としてアラタ体でGAL4遺伝子が発現する系統を用いた。その結果、2眠あるいは3眠になるはずの個体が正常に発育して4眠蚕となった。この実験によって、単離した候補遺伝子がmodの原因遺伝子であることを遺伝学的に証明することができた。また、mod系統における体内ホルモンの分析を行った結果、候補遺伝子の欠損が早熟変態を引き起こす事実を説明する、またmod座が眠性決定に極めて重要であることを裏付ける生化学的なデータを得ることが出来た。一方、M3については、責任領域内に存在する遺伝子の発現解析を行い、候補遺伝子と眠性決定機構との因果関係について調査した。また、M3のalleleであるM5についてもポジショナルクローニングを展開し、候補領域を36kbに絞り込むことができた。この成果は、M座がいかにして脱皮回数の決定に関わるのか、またM3,+M,M5という各allele間の関係を解明するための大きな手がかりになるものと考えられる。また、UAS異所発現法を用いた新規眠性変異体の作出については未だ新規変異体が単離できておらず、今後の課題となっている。
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