研究課題
本年度は、前年度に引き続き、カイコの眠性変異体mod, rt, Mのポジショナルクローニングを行った、UAS異所発現法による新規眠性変異体の作出については、狙い通りの結果が得られなかったため、実験の実施を中止し、眠性変異体の原因遺伝子の機能解析に注力することにした。カイコの眠性変異体mod(2眠)については、その原因遺伝子の同定と機能解析が終了し、modの原因が、幼若ホルモンの生合成の異常によるものであることを明らかにした。この成果をもとにmodに関する投稿論文の執筆と投稿準備を行い、また、国際学会においてその成果を公表した。rt (劣性3眠)については、前年度までに約400kbまで絞り込んでおり、さらに候補領域を狭めるために約800個体のBC_1を用いてマッピングしたものの、残念ながら候補領域のさらなる絞り込みには至らなかった。しかし、副次的な成果として、rtのファインマッピングの過程で、rt座の近傍に位置する笹繭b (Gb)座の原因遺伝子を同定することができた。M座については、M候補遺伝子の詳細な発現解析を行い、M座がエクジソン生合成に関わる可能性を示唆する結果が得られた.また、M^<3>、+M、M^<5>の各allele間でM候補遺伝子の配列比較を行ったところ、候補遺伝子がコードするタンパク質にはアミノ酸置換が存在しないことが判明した。したがって、この候補遺伝子の転写調節あるいは翻訳後調節が、カイコの眠性決定機構に重要であることが示唆された。この候補遺伝子は、生物のボディプランに関わる非常に重要な遺伝子であるが、形態形成以外にも内分泌系への関与を通して生物の成長や発育タイミングを決定するという、これまで全く知られていなかった、新規の機能を持っている可能性がある。
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Genes to Cells
巻: (印刷中)
FEBS Journal
巻: 277 ページ: 4452-4463
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 107 ページ: 11471-11476