アーバスキュラー菌根のリン酸獲得機構の分子メカニズムを解明するために、以下の研究を行った。 1. 菌根におけるポリリン酸局在.菌根におけるポリリン酸局在を高感度で検出するため、我々が開発したポリリン酸検出法の改良を行った。ポリリン酸の検出には、ポリリン酸へのポリリン酸分解酵素の結合と免疫染色によるポリリン酸分解酵素のラベルのにより行うが、免疫染色のエッチング剤にナトリウムエトキシドを用いることでポリリン酸の検出感度を高めることが可能となった。本方法を用いて樹枝状体のポリリン酸局在を解析したところ、樹枝状体トランクの細胞壁にポリリン酸が検出されたが、ファインブランチにはポリリン酸が検出されなかった。今後、リン酸トランスポーターや酸性ホスファターゼ遺伝子の発現抑制個体を用いてポリリン酸局在の解析を行う予定である。 2. 菌根における酸性ホスファターゼ活性の分布.セリウム塩法を用いて菌根における酸性ホスファターゼ活性の分布を電子顕微鏡で観察した。ファインブランチの樹枝状体周辺膜に酸性ホスファターゼの強い活性が検出されたが、トランク周辺の樹枝状体周辺膜にはわずかにしか検出されなかった。 3. 菌根依存的酸性ボスファターゼ遺伝子の探索.ミヤコグサのパープルホスファターゼ遺伝子LjPAP1~LjPAP5をRACE法によりクローニングした。遺伝子発現解析の結果、菌根菌感染時のLjPAP3遺伝子の発現量は非感染時に比べ約10倍高いことが明らかとなった。今後、LjPAP3の局在や生化学特性を解明する。 4. ミヤコグサ変異体のスクリーニング.EMS処理したミヤコグサから菌根を介したリン酸輸送に異常が見られるミヤコグサ変異体を選抜するため、選抜法の検討を行った。選抜の指標として、地上部薪鮮重量と葉中遊離無機リン酸濃度、菌根アルカリホスファターゼ活性染色を検討し、多試料を処理する方法を開発した。
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