アーバスキュラー菌根のリン酸獲得機構の分子メカニズムを解明するために、以下の研究を行った。 1.菌根におけるポリリン酸と酸性ホスファターゼ活性の局在.ポリリン酸と酸性ホスファターゼ活性の局在解析から、樹枝状体ではファインブランチで酸性ホスファターゼによるポリリン酸の分解活性が高い可能性が示された。樹枝状体で検出された酸性ホスファターゼがポリリン酸を分解するかどうかについて直接的な証拠は得られなかったが、酸性ホスファターゼは菌根菌の細胞内菌糸から植物へのリン酸の運搬に関与している可能性がある。また、ポリリン酸と酸性ホスファターゼ活性は崩壊した樹枝状体でも観察されたことから、菌根共生におけるポリリン酸の輸送機構として、成熟した樹枝状体でのポリリン酸の分解に伴うリン酸の利用だけでなく、樹枝状体の崩壊に伴う菌根菌由来のリン酸の利用の可能性も考えられた。 2.菌根依存的酸性ホスファターゼ遺伝子の解析.ミヤコグサのパープルホスファターゼ遺伝子LjPAP1~5に加えてLjPAP6~8をクローニングした。LjPAP3遺伝子のみが菌根菌感染によって発現が10倍程度上昇し、プロモーター解析と免疫染色からLjPAP3は樹枝状体が形成される皮層細胞で発現していることが明らかとなった。LjPAP3をPichia pastorisで発現させ、酸性ホスファターゼ活性を有することを確認した。LjPAP3のRNAi系統を作成し、野生型に比べLjPAP3発現量が約1/6に減少していた。今後、LjPAP3RNAi系統のリン栄養を調査し、LjPAP3の機能を解析する。 3.ミヤコグサ変異体のスクリーニング.EMS処理した910個体のミヤコグサから菌根を介したリン酸輸送に異常が見られる変異体の一次スクリーニングを行った。新鮮重量と地上部リン濃度が低い個体は43個体であった。ALP活性が低い個体は63個体であった。今後二次スクリーニングにより形質の再確認を行う。
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