核磁気共鳴画像法(MRI)は、生体の深部に渡る断層画像を非侵襲的に、かつ高分解能で撮影できるため、臨床医療において様々な診断に汎用されている。MRI画像をより鮮明にするMRI造影剤として、主にGd^<3+>錯体が用いられており、さらに近年ではこのGd^<3+>錯体に機能を付加し、特定の病態や生体分子を可視化する試みが盛んに行われている。しかしながら、MRIの感度の低さ、Gd^<3+>錯体を生体に導入した際、排泄が早く、体内動態を制御する必要性があることなどから、機能性Gd^<3+>錯体の開発は困難であった。そこで、機能性MRIイメージングプローブの開発の新たな試みの第一歩として、蛍光色素の化学的特性を利用することで、Gd^<3+>錯体の細胞膜透過性の獲得による細胞内への集積を試みた。さらに本手法は、蛍光色素を利用することから同時に高感度な蛍光法を利用でき、細胞・組織レベルでの詳細な解析を可能とする。具体的には様々な蛍光色素をGd^<3+>錯体に結合させたMRIイメージングプローブを合成し、HeLa細胞を用いた細胞膜透過性の検討を行った。その結果、cyanineまたはBODIPYをGd^<3+>錯体に結合させることで、効率良く細胞内にGd^<3+>錯体が導入され、MRI及び蛍光顕微鏡の両方で観察することに成功した。また、この細胞内への導入効率はポリアルギニンといった正電荷に帯電した細胞膜透過性ペプチド(Protein Transduction Domain : PTD)による導入効率よりも高いことを示唆する結果が得られている。このように、蛍光色素の化学的特性によってGd^<3+>錯体に細胞膜透過性を付与できることを見出した。さらに、蛍光色素の構造をデザインすることで、細胞膜透過性を制御することにも成功している。
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