MRI(magnetic resonance imaging)は、生体の深部に渡る断層画像を非侵襲的に、かつ高分解能で撮影できるため、臨床医療において様々な診断に汎用されている。MRI画像をより鮮明にするMRI造影剤として、主にGd^<3+>錯体が用いられており、さらに近年ではこのGd^<3+>錯体に機能を付加し、特定の病態や生体分子を可視化する試みが盛んに行われている。しかしながら、MRIの感度の低さや、Gd^<3+>錯体を動物個体に導入した際、排泄が早く、体内動態を制御する必要性があることなどから、機能性Gd^<3+>錯体の開発は困難であった。私は平成20年度までに、蛍光色素の化学的特性を利用することで、Gd^<3+>錯体を効率良く細胞内へ集積させることに成功している。本平成21年度では、更に以下のような本手法の詳細な検討を行った。蛍光色素であるBODIPYまたはCy7dyeをGd^<3+>錯体に適切に結合させた、細胞内に効率良く導入可能なGd^<3+>錯体、BDP-Gd及びCy7-Gdの細胞内導入効率について、ICP-MSを用いて代表的な細胞内導入法の一つであるpoly-arginineを用いた手法と比較したところ、BDP-Gd及びCy7-Gdは同等またはそれ以上の導入効率を示した。また、本化合物は細胞からの漏出性が低いことが蛍光イメージングにより確認された。共焦点蛍光顕微鏡を用いた検討では、BDP-Gdはゴルジ体への、Cy7-Gdはライソソームやミトコンドリアへの局在が見られた。さらに、Cy7-Gd誘導体をマウスに静注してMRIによる生体イメージングを行ったところ、肝臓への集積が観察され、また化合物の細胞膜透過性の違いにより肝細胞内への取り込み量、及びそれに伴う造影効果が異なることを見出した。今後、本知見を基に病変部位等を可視化できる新たな機能性MRI造影剤の開発を行っていく。
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