本年度は、自己増殖不能Adベクターより、わずかながら発現するAdタンパク質に対する免疫応答を抑制することを目的に、E2aもしくはE4遺伝子の3'非翻訳領域にmiRNAの標的配列を挿入したAdベクターの機能解析を行った。まず、本実験に先立ち、従来の自己増殖不能Adベクターより発現するAd遺伝子の定量的解析を行った。その結果、E4遺伝子およびpIX遺伝子が最も多く発現することが明らかとなった。一方で、Ad外殻タンパク質の発現は極めて低いものであった。次に、E2aもしくはE4遺伝子の3'非翻訳領域にmiR-122aもしくはmiR-142-3pの標的配列を挿入したAdベクターを、各種培養細胞に作用させたところ、miRNAの発現量に従い、Ad遺伝子の非特異的発現を大きく抑制することに成功した。さらにmiR-122aの標的配列をE2aもしくはE4遺伝子の3'非翻訳領域に挿入したAdベクターをマウスに静脈内投与したところ、肝臓におけるE2aもしくはE4遺伝子の発現を大きく抑制することに成功した。現在、pIX遺伝子の発現を抑制するため、pIX遺伝子の3'非翻訳領域にmiRNAの標的配列を挿入したAdベクターの開発に取り組むとともに、in vivoにおけるAd遺伝子の非特異的発現抑制について、更に検討を進めている。また、CreリコンビナーゼとmiRNAによる遺伝子発現制御システムを併用することにより、さらに肝臓における遺伝子発現を抑制するとともに、脾臓特異的に遺伝子発現可能なAdベクターシステムの開発に取り組んだ。miRNAによる遺伝子発現抑制システムとCre-loxPシステムとの併用により、miRNAによる遺伝子発現抑制システム単独時と比較し、肝臓での発現をさらに約50倍抑制することに成功した。本Adベクターシステムは、抗原タンパク質を脾臓特異的に発現させることによるワクチン療法に有用と期待される。
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