免疫応答誘導の場として機能する二次リンパ器官では、間葉系由来のストローマ細胞ネットワークが組織構造や免疫細胞の活動のための基盤を提供している。しかし、ネットワークの構築原理やリンパ球動態を制御するするメカニズムの詳細は明らかになっていない。これらを検討するためには新たな研究手法が必要であった。 我々は、マウスリンパ節からストローマ細胞分画を単離培養する手法を開発し、これにより形成させた単層上においてマウスT細胞を効率よく遊走させることに成功した。この系を用いてT細胞がケモカインやインテグリンに依存してストローマ細胞上を移動することを明らかにした。また、繊維径や網目サイズが適したスポンジ素材に、リンパ節由来初代ストローマ細胞を播種し三次元的なネットワーク構造の再現を試み、生体内に見られる組織構造の状況を良く反映した細胞ネットワーク構造を形成させることが可能となった。一方、マイクロアレイ解析によりリンパ節ストローマ細胞分画とマウス胎仔線維芽細胞を比較し、ストローマ細胞に特異的に発現する多数の遺伝子を同定し、今後の研究の手掛かりを得た。 生体内の組織におけるストローマ細胞の役割を直接的に調べるためには、ストローマ細胞特異的に誘導性遺伝子改変が可能なモデル動物を作製する必要があるが、この目的のためにストローマ細胞を含む間葉系細胞においてエストロゲン受容体のリガンド結合ドメインにCreリコンビナーゼを融合させたCreERT2やGFP遺伝子を発現させたトランスジェニックマウス作製した。これによりストローマ細胞の特異的機能を検討することが可能となった。
|